遺産分割協議の「相続しない」と相続放棄は異なる
相続放棄にはほかにも注意すべきケースが多々ある。相続診断協会の法務税務委員で弁護士の木野綾子さんが指摘するのは、母親思いの娘の実例だ。
両親と一人娘の家庭で父が亡くなり、残された娘が「遺産はすべて母に渡したい」と早々に相続放棄した。だが、第一順位の子供が相続放棄したことで父の兄弟に相続の権利が発生してしまった。
「遺産分割協議ですべて母が相続すると決めておけばよかったのに、母を思って相続放棄したことが裏目に出ました」(木野さん)
遺産分割協議で決めた「相続しない」と、相続放棄は異なるので要注意だ。『身内が亡くなってからでは遅い「相続放棄」が分かる本』(ポプラ社)の著者で司法書士の椎葉基史さんが言う。
「親の遺産分割協議書に“何も受け取りません”と署名捺印して相続放棄したと思っていたら、後に親の借金がわかって返済を求められた例があります。遺産分割協議書は“プラスの財産はいりません”との表明で、正式に相続放棄の手続きをしないと、マイナスの財産を背負うことになります」
相続放棄しても、生命保険はもらえることも知っておきたい。
父の死後、160万円の借金と500万円の生命保険を残された山梨県の金子博さん(43才・仮名)。当初は相続放棄しようと思っていたが、放棄すると生命保険までもらえなくなると勘違いし、相続放棄を結局、申請しなかった。
すると半年後に父にもう800万円ほどの借金があることがわかり、結果的に大損することになった。
※女性セブン2022年7月7・14日号