そうなると、「第三者が財産を家族にも使わせないようにして、おまけに報酬まで取られるのは……」と、利用に後ろ向きなケースも出てくる。
そこで、より使い勝手のよい制度として注目されているのが家族信託だ。
「認知症になる前に財産所有者(委託者)が、財産を家族など信頼できる人(受託者)に託して譲渡する制度です。形式的に所有権を移転して相続人などの受託者に運用や管理をしてもらう契約を結びます。成年後見制度と異なり、弁護士などは信託契約の受託者にはなれません」(遠藤氏)
不動産などの財産ごとに契約ができ、多くのケースで受託者に託した財産の運用で得た利益を受け取る「受益者」が委託者と同一となるかたちで契約を結ぶ(図)。委託者が亡くなったらその配偶者に受益者の権利を移す契約や、信託契約の終了後に財産を子供や孫に渡す契約なども可能で、自由が利くのが特徴だ。
「成年後見制度では土地を有効活用してアパートを建てたり、株式投資などの資産運用はできないが、家族信託では契約上、運用が認められていれば可能になる。妻や子供のために財産を活用したり、処分したり生前贈与のような形での利用もできます」(遠藤氏)
※週刊ポスト2022年7月8・15日号