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「サハリン2」接収 英シェルのしたたかな動きがロシア政府の反感買ったか

サハリン2には三菱商事が10%出資していた(時事通信フォト)

サハリン2には三菱商事が10%出資していた(時事通信フォト)

 資源エネルギー論が専門の岩間剛一・和光大学経済経営学部教授は、「日本のエネルギー供給の生命線が狙われた」と指摘する。

「サハリン2のLNGは日本の電力・ガス会社に長期契約で供給されている。契約価格は現在の市場のスポット価格(1回ごとに行なう売買取引の際の取引価格)の3分の1~4分の1で、運搬も中東産のLNGが2週間ほどかかるのに比べ、サハリン2なら3日で日本に着く。日本では原発事故以来、電力の8割を火力発電に依存し、そのうち3割以上がLNG火力。今やサハリン2は日本のエネルギーの生命線の一つになっている。

 ロシアが夏の電力需給逼迫のタイミングでサハリン2の事実上の国家接収を迫ってきたのは、明らかに経済制裁で欧米と共同歩調を取る日本政府への揺さぶりでしょう」

「ここまでやるとは」

 この異例の措置は経済界に衝撃を与えた。日本商工会議所会頭の三村明夫・日本製鉄名誉会長の発言が、ショックの大きさを物語る。

「信じられない。契約によって投資したものを何の理由もなく国有化するようなことを本当にやるのであれば、将来、ロシアに投資をしようという民間企業はほとんどいなくなってしまう」

 事業を“接収”される危機に立つ側の三井物産、三菱商事はどう受け止めているのか。

 そもそもロシアのウクライナ侵攻に対して欧米と日本が経済制裁を決めた時、英国のシェルがいち早く「サハリン2」からの撤退方針を発表したのに対し、日本政府は「権益を手放した時に、第三国がただちにそれを取ってロシアが痛みを感じないことになったら意味がない。フリーズした状態なら権益を持ちながらしばらく様子をしっかり見ていくことも一つの方法ではないか」(3月8日、参院経産委員会での萩生田光一・経産相の説明)という方針を取り、両社はそれに従って状況を見極めようとしていた。

 そこに今回の“プーチン指令”が出ると、商社内部の受け止め方は二つに分かれた。「ついに来たか」そう腹をくくる声と、「ここまでやるとは」と、率直に驚く声だ。

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