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「サハリン2」接収 英シェルのしたたかな動きがロシア政府の反感買ったか

三井物産はサハリン2に12.5%出資(時事通信フォト)

三井物産はサハリン2に12.5%出資(時事通信フォト)

 だが、「七つの海」を股にかけて数多くの国家と取引してきた商社マンたちは、いわばリスクを取るのが商売だ。政府と違って修羅場にフリーズしていては沽券にかかわる。ただちに情報収集に動いた。サハリン2に関わる商社関係者の話だ。

「現地のブランチを含めて大統領令の詳細な内容と狙いを探っているところです。ロシアのLNG事業はサハリン2以外にもある。ロシアの企業とフランスの企業が共同開発している北極海のヤマルのLNGは、ほぼ全量が欧州に供給されているが、現在も止まっていない。フランスの企業は『ヤマルは必要だから継続する。権益を持ち続ける』と明確に言っており、欧州諸国もロシアもLNGを全部止めるわけにはいかないわけですが、ではなぜサハリン2が狙われたのかという話になってくる」

 そうしたなかで浮上してきたのが、ロシアに強い制裁を科している英国のシェルのしたたかな動きだという。

 同社は撤退を決めたサハリン2の権益をインド企業に売却する交渉を進行中と報じられた。前出の商社関係者が続ける。

「撤退表明したシェルは株を売却すると言いながらまだ具体的な交渉はしていない。その間にサハリン・エナジーから配当を得たり、サハリン2のLNGをスポット市場で売却して利益をあげている。それがロシア政府の反感を買ったという見立てがある。だからロシアはシェルが株を売却する前に、サハリン2の権益を新会社に移管して売れないようにしたいと考えているのではないか」

 経済制裁に同調する日本を牽制しながら、英国シェル社の“権益食い逃げ”も阻止しようとするロシアの思惑の中で、商社マンたちは事態打開の道を見出そうとしている。

第2回へ続く

※週刊ポスト2022年7月22日号

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