マーケットの最大の関心事は米国景気の行方
一方の日銀はどうか。1ドル=140円にも迫ろうかという「円安」に対して、円買いを促す利上げに踏み込めていない。金融緩和によって景気を上向かせるというアベノミクス路線から脱却できず、利上げできない“呪縛”にとらわれているようだ。
行動経済学の視点では、それこそ「利上げできない」という枠(フレーム)にとらわれた「フレーミング効果」そのものといえるだろう。
このように日米の中央銀行が動きようのないスタンスであることを見越して、金融市場でも方向感の見えない動きが続いているわけである。
そうしたなか、いまマーケットの最大の関心事は「米国景気が減速でとどまるのか、それとも後退まで突き進むのか」という点だ。
すでに6月末に発表された米国の実質個人消費支出(インフレ調整後)は前月比0.4%減と、米国経済を牽引する個人消費にも変調の兆しが見て取れる。景気減速の可能性は高まっているが、はたしてこれが景気後退まで進んでしまうのか。
仮に「後退」となってしまえば、大きな嵐となって世界同時株安も現実味を帯びてくる。事態の推移を注意深く見守る必要があるだろう。
【プロフィール】
真壁昭夫(まかべ・あきお)/1953年神奈川県生まれ。多摩大学特別招聘教授。一橋大学商学部卒業後、第一勧業銀行(現みずほ銀行)入行。ロンドン大学経営学部大学院卒業後、メリルリンチ社ニューヨーク本社出向。みずほ総研主席研究員、信州大学教授、法政大学大学院教授などを経て、2022年4月から現職。「行動経済学会」創設メンバー。脳科学者・中野信子氏との共著『脳のアクセルとブレーキの取扱説明書 脳科学と行動経済学が導く「上品」な成功戦略』など著書多数。近著に『ゲームチェンジ日本』(MdN新書)。