5月の下旬からNYダウや日経平均は下落一辺倒の動きではなくなった。今後の株式市場はどう推移していくのか。株やFX(外国為替証拠金取引)などのカリスマ主婦トレーダーとして知られる池辺雪子さんが、直近の相場動向と共に日銀の政策スタンスについて解説する。
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足元の株式市場は底堅くなり、直近までの売られ続けるような状況ではなくなってきているように思えます。目先はドル売り、株高、金利低下が影響し、米利上げを背景とした相場展開の行き過ぎを修正するような動きを見せています。
米国債の金利動向に目を向けると、2年債利回りの方が10年債利回りに比べ金利が低下し、長短金利差が拡大しています。これは株式市場にとっては、好材料のひとつです。日経平均も27000円あたりまで上昇し、悲観的な相場からはひとまず落ち着きを見せるのではないでしょうか。
またバンク・オブ・アメリカが機関投資家向けに行っている調査から、運用資産に占める現金の割合が高くなっていることがわかりました。今後この現金がどこに向かうのか注目です。再度、株式市場や債券市場に向かっていくことも想定され、今年前半からの売り圧力は世界的に小さくなっていく可能性が考えられます。
今後の株式市場を見通すうえでは、日銀の政策スタンスにも注視しておきましょう。現在の日銀のトップである黒田東彦・総裁は、来年の3月までが任期です。任期期間中は、これまでの方針を大きく変更することはなく、今の政策スタンスを維持していくという見方が根強いです。世界的な物価高騰局面で米FRB(連邦準備制度理事会)も利上げを進めていますが、日銀は金利を低く抑えるために「指値オペ」を実施しています。こうしたことからも、黒田総裁のスタンスがうかがえると思います。
このように日本の物価も少しずつ上昇する中、目立った政策変更は行われていませんが、次の日銀総裁は一転して政策金利を引き上げてくることも想定されます。指値オペなどをストップさせ、日本国債の金利が大きく上昇するシナリオも考えられます。
円安が消費者に与える影響は大きく、政府としては補正予算を組むことも検討しているようですが、補正予算で対応したぐらいでは、短期的な効果しか期待できないと思います。
ちなみに、利上げが進むアメリカでは、住宅ローンの変動金利が急騰しており、すでに月々の返済額も大きく上昇していると報じられています。日銀新総裁が就任し、日本の政策金利も引き上げるようになれば、日本でも住宅ローンの返済額が上昇する可能性があります。住宅ローンを変動金利で組んでいる人にとっては、固定金利への変更を視野に入れてもよいかもしれません。
【PROFILE】池辺雪子(いけべ・ゆきこ):東京都在住の主婦。若い頃から株や商品先物投資を学び、2000年からFX投資を始め、これまでに8億円以上の利益をあげている敏腕トレーダー。2007年春、脱税の容疑で起訴、同年夏、執行猶予刑が確定。その結果、所得税、延滞税、重加算税、住民税、罰金(約5億円)を全て即金で支払う。2010年9月に執行猶予が満了。現在は自らの経験をもとに投資、納税に関するセミナー、執筆活動を行っている。トルコリラ/円、ドル/円、他通貨、日経平均株価などの値動きに関する詳細な分析を展開する「池辺雪子公式メルマガ」も発信中(http://yukikov.jp/)