値上げラッシュが家計を苦しめているが、「申請すればもらえるお金」は案外ある。年金も見逃せない。手続き自体は年金事務所などに請求書類を提出するだけのものも少なくないが、ブレイン社会保険労務士法人代表の北村庄吾氏はこう語る。
「年金で注意したいのがもらい忘れです。通知書に気付かずに、本来受け取れるはずの年金を受給していないケースは多々あります」
まず気を付けたいのが特別支給の老齢厚生年金である。厚生年金の加入期間が1年以上あり、老齢基礎年金の受給資格期間を満たしていれば、受給対象者には60代前半で老齢厚生年金が特別支給される。
「男性の場合、1961年4月1日以前に生まれた人(女性は1966年4月1日以前に生まれた人)が対象で、まずは生年月日から特別支給の対象年齢かどうかを確認することが肝要です。“年金は65歳から”という思い込みで、繰り上げ受給の請求と混同して請求しないパターンが非常に多い。もらっていない人は、年金事務所に問い合わせましょう」
もう一つ、漏れが多いのが加給年金だ。被保険者が65歳に達した時点で、65歳未満の妻(配偶者)や1級・2級の障害の状態にある20歳未満の子供などを扶養していると受給資格がある。ファイナンシャルプランナーの清水斐氏が語る。
「加給年金は、生計を維持されている配偶者が65歳になるまで受給可能で、2022年時点では、配偶者が対象の場合の加給年金額は年間22万3800円です。気付いた時には既に配偶者が65歳を迎えていたという場合でも、5年以内であれば遡って請求することができるので、忘れている人が今から届け出をしても受給できる可能性があります」
そのほか2019年10月から導入された年金生活者支援給付金も「対象者は限られるが、申請の漏れが多い」(北村氏)という。
年金事務所から送られてきた郵送物を今一度チェックする必要がある。
※週刊ポスト2022年7月29日号