2022年は「公的年金」の大改正が実施される。とりわけ注目されるのが「年金を何歳から受け取るか」の選択肢が広がることだ。
年金は原則として65歳受給開始だが、額が減る代わりに受給開始を早められる「繰り上げ受給」や、反対に受給開始を遅らせる代わりに額が増える「繰り下げ受給」が選べる。その双方のルールが変更されるのだ。
まず繰り上げについては、これまで受給開始を1か月早めるごとに0.5%の減額だったのが、0.4%減に緩和される。60歳まで繰り上げた場合、30%減額だったのが、24%減額で済むようになるのだ。厚生年金が月額15万円の人であれば、60歳繰り上げで月額10.5万円まで減らされていたのが、月額11.4万円受け取れるようになる。毎月約1万円のプラスであり、“繰り上げが選びやすくなった”と考える人もいるかもしれない。しかし、年金博士こと社会保険労務士の北村庄吾氏はこう注意を促す。
「5年繰り上げに対しての6%緩和はたしかにインパクトがあるが、それでも繰り上げで減らされた年金額が一生続くことになり、負の影響のほうが大きいのではないか。
また、繰り上げには減額以外の不利益もある。例えば、今の中高年世代は大学時代に国民年金に加入していない人が多く、60歳時点で満額となる40年加入に届いていない人がほとんど。そこで、60歳以降も国民年金の保険料を払って『任意加入』することで、年金を増やす選択肢がある。
ところが、繰り上げ受給を選ぶと、この任意加入ができなくなるのです。他にも一部の障害年金が受けられなくなるケースがあり、繰り上げは慎重に考えたい。年金を増やす努力を優先したほうがいいでしょう」
そうなると、年金を増やせる「繰り下げ受給」が有力な選択肢に思えてくる。繰り下げを巡ってもルール変更があり、これまでは70歳までしか繰り下げられなかったのが、4月以降は75歳までの繰り下げが可能になる。1か月の繰り下げで0.7%増額となるので、75歳受給開始なら84%も年金が増えることになる。