5月13日から、75歳以上のドライバーの免許更新に「運転技能検査」が加わった。過去3年間に一定の違反歴がある場合、試験コースで運転課題をこなし、100点満点中70点以上を取らなければ免許の更新は認められない(第一種免許の場合)。
75歳以上の全員に義務付けられた「認知機能検査」もあるほか、警察庁は運転免許の「返納」も促しており、運転免許更新のハードルは着実に高くなっている。
「高齢になると認知機能が低下し運転技術が衰えることが多く、運転免許を返納しようか迷う方が少なくない。認知症になって運転が危険な方は、もちろん免許の自主返納をして頂くことが必要です。しかし早めの認知症予防に取り組めば、脳と体の機能低下を防ぎ、長く安全運転を続けられます」
そう指摘するのは、『認知症予防で運転脳を鍛える』(JAFメディアワークス刊)の著者で、鳥取大学医学部教授の浦上克哉医師。日本認知症予防学会理事長で認知症診断・予防の第一人者である浦上医師は、「高齢者の運転免許を取り上げるのは逆効果になりかねない」と語る。
「今のシニアは車を持つことがステータスで運転が趣味という世代。免許返納は彼らの生きがいを奪い、行動意欲が低下してかえって認知症リスクが高まります。逆に、運転のように高度な認知機能を必要とする行動を続けることは、認知症予防につながります。高齢者が車を運転すること自体が認知症を防ぐのです」
実際、国立長寿医療研究センターの研究では、運転をしていた高齢者は運転をしていなかった高齢者に対して、認知症リスクが約4割減少することが分かった。