高齢者による悲惨な交通事故が相次いだことで、免許返納を巡る議論が活発化。俳優の杉良太郎や、“尾木ママ”こと教育評論家の尾木直樹氏が免許を返納したニュースは大きく報じられた。「返納したら?」という周囲の声に反発する高齢者は少なくないが、宮城県に住むHさん(70代・男性)は、自ら進んで免許を返納。これが大正解だったという。
Hさんは10代の頃に免許を取り、運転歴は半世紀以上。通勤は車で、休日も家族でドライブに出掛けたり、ゴルフに行ったり、釣りに行ったりと、車べったりの生活だったが、還暦を迎えた頃に転機が訪れた。Hさんがいう。
「私は20代後半に、仙台市内から20分ほどの場所に一軒家を購入しましたが、還暦を目前にして、3人の子供は全員家を出てしまいました。築30年の家はかなりガタが来ていて、子供部屋は物置と化して、子供たちも地元に戻る意思もないようだったので、夫婦で話し合い、近所の駅前に出来たマンションに引っ越しました」(Hさん。以下同)
売るに売れない“負動産”が社会問題化するなか、さっさとマイホームに見切りをつけ、ダウンサイジングを図ったHさん。当初は引っ越し先のマンションの地下駐車場を借り、車を置いていたが、徐々に車に乗る回数は減っていった。
「引っ越した当初は、これまでと同様にどこに行くにも車を使っていましたが、マンションは駅からすぐなので、妻に促されて徐々に電車を使うようになりました。それまでは電車で移動するなど面倒で仕方ないと思っていましたが、繁華街で駐車場を探したり、駐車場待ちの列に並んだりすることを考えると、“電車も意外と悪くないな”と思うようになりました。思えば、駐車料金を無料にするため、余計な買い物もたくさんしていましたしね。
自宅は仙台の中心部からもタクシーで2000円程度なので、電車に乗るのが面倒な時は遠慮なくタクシーを使っています。車の維持費や駐車場代を考えれば安いものです。さすがに行きも帰りもタクシーを使うのは贅沢なので、“行きは電車、帰りはタクシー”というのが夫婦間のルールになっています」