ユーロドルは7月中旬、20年ぶりに一時1ユーロ=1ドルを割り込む局面となった。なぜユーロドルの下落トレンドが続いているのか。また、FX(外国為替証拠金取引)投資家がユーロドルを取引する場合、どういった点に注意すればよいのか。FXなどのカリスマ主婦トレーダーとして知られる池辺雪子さんが解説する。
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7月13日に発表した6月の米CPI(消費者物価指数)の結果は前年比9.1%上昇と、アメリカのインフレには鈍化の兆しが見えません。金利動向に目を向けると、短期金利が上昇する一方で長期金利は低下しているため、リセッション(景気後退)懸念も浮上しています。
足元の歴史的なインフレを抑制するため、米FRB(連邦準備制度理事会)が積極的に利上げを続ける中、ユーロドルが20年ぶりに「パリティ」を割れました。パリティとは「等価」を意味し、「1ユーロ=1ドル」になるということです。
パリティを割れることは、ユーロの方がドルよりも弱くなったことを示します。2021年の年初は1ユーロ=1.23ドル付近で推移していたことを考えると、ユーロの価値は大きく下落しているといえるでしょう。ちなみに過去のパリティ割れを振り返ると、2001年には1ユーロ=0.9ドルを割る局面もありました。ただ、その時と今回とでは取引環境に異なる点があります。それは、スワップポイント(金利差収益)です。
当時、FRBもECBも段階的に利下げを続けていました。2001年末にはECBの政策金利は3%台、FRBの政策金利は1%台で、投資家はユーロドルをロング(買いから入る取引)すればプラスのスワップポイントを得ることができました。そうなると、ロングポジションに含み損が発生しても、スワップポイントがカバーしてくれることもありました。
しかし近年ユーロは長らくマイナス金利状態が続き、金利上昇局面にあるドルと比較すると大きな差があります。ユーロドルをロングで保有するとスワップポイントはマイナスになるため、長期的にロングで保有しづらい市場環境であるといえるでしょう。
では、現在ユーロドルがここまで下落している原因は何でしょうか。理由はいくつか考えられますが、ひとつは今年の米ドル高トレンドです。元々、米国経済は堅調で、なかなか米ドルは下落しづらい格好となっています。そこに加えて、ロシアがウクライナに侵攻し、ヨーロッパ経済に大きく影響を与えていることも、ユーロドル下落の一因といえるでしょう。
もっとも、今後のニュース次第でユーロの動向は変わる可能性があります。そうした中でもチャートは常に動いているので、FXトレードをするならリスク管理を徹底することがとても大切です。将来の不確定要素を予想してトレードするのであれば、それはギャンブルに近いものになってしまいます。チャートの動きをしっかり分析したうえで、きちんとサイン通りのトレードを心掛けるのがよいでしょう。
【PROFILE】池辺雪子(いけべ・ゆきこ):東京都在住の主婦。若い頃から株や商品先物投資を学び、2000年からFX投資を始め、これまでに8億円以上の利益をあげている敏腕トレーダー。2007年春、脱税の容疑で起訴、同年夏、執行猶予刑が確定。その結果、所得税、延滞税、重加算税、住民税、罰金(約5億円)を全て即金で支払う。2010年9月に執行猶予が満了。現在は自らの経験をもとに投資、納税に関するセミナー、執筆活動を行っている。トルコリラ/円、ドル/円、他通貨、日経平均株価などの値動きに関する詳細な分析を展開する「池辺雪子公式メルマガ」も発信中(http://yukikov.jp/)