他方、米サプライマネジメント協会(ISM)が発表する7月製造業景気指数を筆頭に、中国7月財新製造業PMIや米7月ISM非製造業景気指数など重要な景気指標が発表される。米ISM製造業景気指数は前回6月分が予想を大幅に下回って大きく悪化した。その後に発表されている米企業センチメントを図る指標も軒並み予想を下振れており、前月並みが予想されている7月分も更に悪化すると、投資家心理を悪化させそうだ。中国財新PMIも、「ゼロコロナ」政策による行動制限が続けていられるなか、前回6月分は改善したものの、今回の7月分は回復が鈍い可能性がある。エネルギー価格の高騰を背景に景気後退懸念が強まっている欧州を含め、世界経済の中心である米・中・欧の3地域の景気低迷は相場全体の重荷になりそうだ。
週半ば以降に予定されている石油輸出国機構(OPEC)加盟国と非加盟国で構成されるOPECプラス会合と英国金融政策委員会にも注目。バイデン米大統領は先日、サウジアラビアのムハンマド皇太子などと会談し、原油増産を要請したが、その後明確な増産メッセージは伝えられていない。OPECプラスの結果が現行ペース維持もしくは小幅な増産ペース加速にとどまれば、原油先物価格が再び上昇する可能性がある。また、インフレが加速している英国では大幅な利上げの可能性が高まっており、利上げ幅によっては再びグローバルな金融引き締め懸念が台頭する可能性があろう。
7月FOMC後、FRBのパウエル議長は次回9月会合の利上げ幅は「経済データ次第」とした。議長は会見で米経済における消費や雇用の減速を認識したこともあり、市場は景気後退に伴う利上げペース減速への期待を高めている。しかし、FRBは依然としてインフレ抑制を最優先事項として掲げている。その物価指標にまだ明確な減速の兆しは見られていない。インフレピークアウトを主張する強気派が挙げている資源価格の下落も、足元では一服。むしろ、WTI(ウェスト・テキサス・インターミディエイト、9月物)原油先物価格は7月14日に一時1バレル=88ドルまで下落した後は、足元で再び100ドルを窺う水準まで戻している。そのほか、欧州ではロシアとドイツを結ぶ天然ガスパイプラインの稼働問題を背景にガス価格が急騰、米国でも猛暑に伴う冷房需要を背景にガス価格は大幅に上昇している。
米雇用統計での平均賃金の伸びも6月分まで前年比+5%以上と高い水準が続いている。今週末に発表される雇用統計でも平均賃金にピークアウトの傾向が確認されなければ、翌週8月10日に控える米7月消費者物価指数(CPI)の発表を前に再び警戒感が高まるだろう。
力強い動きを見せてきた米主要株価3指数も既に100日移動平均線近辺まで戻してきた。今年前半のリバウンド局面ではいずれもこの100日線が戻り一服の目処になってきたことで、そろそろ買い戻しも一巡してくる頃合いと考えられる。FOMC結果公表があった当日には買い戻しだけでなく、軽い新規買いも入っていたとの声も聞かれたが、当日の株式取引量は過去3回のFOMC当日の取引量と比較して25~35%程少なかった。決算発表が本格化する中でのFOMCとしてはかなり少ないといえる。株式市場は上に行きたがっている様子が窺えるものの、そのエネルギーは余力に乏しそうだ。
日経平均も大きくリバウンドしてきた一方、節目の28000円回復には至っておらず、一段高には材料不足、エネルギー不足のようだ。これまで欧米株対比での日本株の底堅さに繋がってきた為替の円安・ドル高もピーク時に付けた1ドル=139円台から大きく円高・ドル安に傾いてきており、支援要因が無くなってきている。景気後退懸念が深まるなか、グローバルな景気敏感株とも称される日本株にとっては逆風が強くなっているともいえ、日経平均の28000円定着には時間がかかりそうだ。
なお、今週は8月1日に7月新車販売台数、中国7月財新PMI、米7月ISM製造業景気指数、3日に米6月製造業受注、米7月ISM非製造業景気指数、OPECプラス会合、4日に英国金融政策委員会、米6月貿易収支、5日に6月毎月勤労統計調査、米7月雇用統計、米6月消費者信用残高などが発表予定。