家族の形はさまざまだからこそ、相続を巡ってはこんなケースもある。広島県在住の川口芳美さん(60才・仮名)は、子供の頃に両親が離婚し、実の父と再婚相手の女性、その子供の4人家族で暮らしてきた。血のつながりがなくても家族仲はよく、川口さんは父の再婚相手である継母の介護も進んで行った。
「実の父が亡くなってからも、要介護状態になった継母の面倒を見るのは、苦ではありませんでした。でも、継母が亡くなったとき、私は財産を1円も相続できなかったのです。
継母は生前いつも“遺産は全部あなたにあげるからね”と言ってくれていました。でも、継母が父と法律上の夫婦になり、家族の絆が生まれても、私が父の連れ子であることは変わらない。継母と養子縁組をしていなかったため、私に相続権はなかったのです。どうしてあのとき、遺言書を書いてもらわなかったのか」
ひとつ屋根の下に暮らしているのに、血縁関係の有無で相続できるかどうかが左右される。特に、夫の親と同居する「長男の嫁」は、年を重ねるほど不安が増す一方だ。都内在住の大江智子さん(53才・仮名)も、先行きを案じる1人だ。
「いまは夫の両親と二世帯住宅に住んでいるのですが、義実家の財産はほぼ、この家と土地くらいしかありません。夫は5人きょうだいの長男で、もし、義父が亡くなったら、この家の土地を売却して分割するしかないはずなんです。夫はのんきに構えていますが、いつか遺産分割のために住む家を追われるんじゃないかと……相続人でもない私が出しゃばるわけにもいかず、いまから不安で仕方ありません」
義理の両親はまだ元気で、嫁である大江さんから遺産分割の話など、とうていできる雰囲気ではないという。
※女性セブン2022年8月18・25日号