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遺言書の「仲良く公平に」が招いたトラブル 遺志がわからず分割協議が進まぬ事態に

遺言書は「作れば安心」というわけではない(イメージ)

遺言書は「作れば安心」というわけではない(イメージ)

 のちのち相続で揉めないためには、遺言書を作成するのが最善策。ところが、せっかく遺言書をつくっても、内容によってはむしろ揉めごとの火種になったり、まったく役に立たないことさえ少なくない。

 千葉県在住の森脇美智子さん(68才・仮名)は、母親が残した“遺言書トラブル”の真っ只中にいる。

「母の遺言書には“遺産は兄妹ふたりで仲よく公平に分けなさい”としか書いてありませんでした。“仲よく公平に”と言われても、遺産は預貯金だけでなく、家や土地もあって、何をどう分けるのが“公平”なのかわかりません。“家と土地を売ったお金を半分ずつ”なのか“家は兄、土地は私”が公平なのか“預貯金は兄、家と土地は私”が公平ということになるのか……。

 付言事項も書いてありましたが、そこにも“兄妹で仲よく”といった内容しかなく、母は私たちにどうしてほしかったのか、遺志がわからないのです」

 遺言書だけではどうしたらいいのかわからず、森脇さんは専門家に分割協議を依頼したが、いま、新たな混乱を招きそうな事態に陥っているという。森脇さんの兄に、認知症の疑いが出てきたのだ。

「10才年上の兄は、以前より判断能力が失われてきているのです。これでもし、兄に認知症の診断が下りたら、兄に成年後見人をつけないと遺産分割協議ができなくなると聞いて、焦っています」

 認知症を発症した後では、任意後見契約を締結することができず、家庭裁判所が選任する法定後見人をつけなければならない。

 法定後見人は被後見人(この場合は、森脇さんの兄)の財産を守るように働きかけるため、定められた「法定相続分」を主張するのは間違いない。

 実は森脇さんは長年、亡くなった母の介護を担ってきた。母の遺言書にある「公平に」が、法定相続分である「2分の1ずつ」なのか、介護をしてきた森脇さんの貢献を考えた上での「公平」という意味なのかもわからないのだ。

 兄が認知症でなければ話し合いのもと「公平」に分けることもできるが、兄の成年後見人は「2分の1ずつ」を主張する可能性が高い。こうなるともはや、森脇さんの母への貢献を考慮した「公平」をすんなり実現することは難しいだろう。

 自分も家族も後悔しない相続をするためには、事前の準備が不可欠なのだ。

※女性セブン2022年8月18・25日号

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