コロナ禍もあり、この数年は親と大事な話し合いができなかったという人も少なくないだろう。神奈川県在住の50代男性・Aさんはこの夏、老親や兄弟と久しぶりに顔を合わせる予定だ。そこで、親の「死後」のことについて話し合いたいが、少し躊躇しているという。
「お盆は実家に帰る予定です。去年の帰省時も家の老朽化や老親の健康状態が気になり、そろそろ80歳になる親父が死んだ後のことを決めなきゃと思ったのですが、結局これまで何も話せずじまい。そもそも特に親孝行をしてこなかったのに、どんな財産があるのかを聞くのも少し気が引ける。兄夫婦も来るので、今年こそは相続について家族で考えたいが、一体何から始めればいいのか……」(Aさん)
歳を重ねると、「親の最期」が現実味を帯びてくる。MUFG相続研究所が2021年に40歳以上の男女5159人に行なった調査「現代日本人の相続観」によると、50代で7割、60代では9割の人が相続を経験しているという。一方、最近テレビなどでも取り上げられる機会が増え、「終活」という言葉の認知度は高まってきたが、親がエンディングノートを準備している人はわずか9%(相続未経験者)。ほとんど何も準備できていない親子が多いことが読みとれる。
「財産が少ないのでウチには関係ない」と考えたり、Aさんのようになかなか親に切り出せない人もいるだろう。
「お盆こそ、相続について親子で話せる絶好の機会です」。そう指摘するのは、行政書士でファイナンシャルプランナーの柘植輝氏だ。
「相続は親の生死と財産が関係するのでどうしても話題に出しづらく、親子の間で“タブー”のようになってしまうケースが少なくありません。私の相談者のなかには、親から『まだ生きているのに死んだことを前提に話すのか?』『財産が目当てか?』と言われ、取り合ってもらえなかったという人もいます。
しかし、死に向き合えるのがお盆。先祖のお墓参りのついでに『お爺ちゃんの葬式は大変だったね』と、それとなく親の相続経験を聞いてみると親も話しやすくなるでしょう。
そして、『面倒で難しそう』『財産が少ないから関係ない』と思わないこと。親が生きているうちに早めに動けば、トラブルや煩わしい手続きを軽減することが可能です」