相続はコミュニケーションが大切なのだ。
そして、おおよその財産総額と相続人を把握できたら、遺産の分け方も決めていく。それが決まっていないと、後々の家族間のトラブルの火種になりやすいからだ。有効なのが遺言書の作成だ。柘植氏が解説する。
「相続財産の分け方の話し合いが済んでいても、遺言書に書き残しておかないと後にトラブルになる可能性があります。相続においては遺言書の内容が何よりも優先され(遺留分侵害額請求は可能)、遺産分割協議を省略できる。その後の手続きが格段に楽になります」
遺言書は主に本人が手書きで作成する「自筆証書遺言」と、公証役場で公証人が作成する「公正証書遺言」の2通りがある。何度でも書き直せて費用がかからない自筆証書遺言が手軽だ。
「要件さえ満たしていれば、ノートの切れ端やチラシの裏に書いていても有効です。その要件とは、必ず本人の手書きであること、そして、誰(署名)がいつ(日付)作成したかを記載(捺印)し、そのうえで財産をどう分けるかという具体的な内容が必須になります。せっかく家族が集まるのなら、遺言書の内容を話し合って、親に準備してもらうのが望ましい」(柘植氏)
ズボラな人でも、3つの準備だけでまずは十分。その際には、親の話にきちんと耳を傾けることが肝要だ。
※週刊ポスト2022年8月19・26日号