現在、大学の教員に「実務家教員」と呼ばれる存在が増加している。文部科学省によれば「専攻分野における実務の経験を有し、おおむね5年以上の実務の経験を有し、かつ高度の実務の能力を有する者」と定義されている。
大学がこうした実務家を教員として雇用するようになった背景には、学部段階から企業との有機的な連携を求める声や、実践的な教育へのニーズの高まりがあると言われている。関西の有名私大に勤務する大学教員(40代・男性)は、実務家教員の存在について、次のように説明する。
「現在、私立大学では、どこも学生たちの就職率を非常に重視しています。学生生活に関するアンケートを実施すると、『内定が取れるか不安』『ちゃんと行きたい業種に就職できるか』といった回答が多くを占めます。またオープンキャンパスで個人面談をすると、保護者の質問もその大半が就職に関するものです。
各大学にはキャリアセンターがあり、そこでイベント開催や面談などをしていますが、それだけではサポートが十分とは言い難い。実務家教員を雇用するメリットは、現場経験が豊富な教員を雇用することで、早くから学生に業界への関心を持たせ、就職活動に励んでもらうということがあります」
しかし、実務家教員を増やすことにはデメリットも感じるという。
「もちろん、メリットだけではありません。大学教員は研究と教育の二本柱が基本ですが、研究を疎かにしている実務家教員は少なくありません。昇任人事の際に、『論文審査よりも教育活動を重視してほしい』と要望を出す方もいました」(同前)
実務家教員による事件も起こっている。今年7月、勤務先の女子大で、女子学生に睡眠薬を混ぜたお酒を飲ませわいせつ行為を行ったとして逮捕されたのは、民放キー局で解説委員などを務めた元大学教授だった(逮捕直前に大学に懲戒解雇されている)。
はたして学生たちは、実務家教員についてどう感じているのか。そのリアルな声を集めた。