オンライン動画授業の解析でわかった事実
大学教員の側も、このような学生の傾向を感じ取っている。都内の私立大学で文系科目の講義を担当している男性教員(40代)は、こう語る。
「現在、私の大学では基本的には対面授業、大人数科目はオンライン授業となっています。オンデマンド授業では、60分ほどの講義動画を限定公開でYouTubeにアップロードし、学生が視聴して課題や小テストに答えるという形式をとっています。YouTubeには動画やチャンネル全体のアクセス解析ができるツール『YouTubeアナリティクス』という機能があり、総再生時間や視聴回数、リアルタイム統計などを見ることができます」
同機能を使うと、オンライン授業を受講する学生の傾向が見えてくるという。
「興味深いのは“視聴者維持率”です。動画を最後まで見た人の割合がわかる指標ですが、時間の経過とともにどこで学生が視聴をやめたか、あるいはどのパートを繰り返し視聴しているのかも確認できます。学生の大半が、講義のなかで課題と小テストの内容について話している箇所を中心に再生しており、動画の最後までしっかりと視聴している学生は非常に少ない。
課題の内容が分かればそこで離脱してしまい、最後まで内容を聞こうとしないのです。あるいは別の作業をしたまま“流し視聴”をして、課題の内容のあたりだけ繰り返し再生しているのでしょう。せっかく授業を履修しているのだから、講義の内容に耳を傾けてほしいというのが本音です」(同前)
教授陣の苦労を思うとやるせない気持ちになるが、そんな教員の意見に対して学生たちの反応は極めてドライだ。国立大学に通う学生Cさん(21歳)は、こう語る。
「オンラインの動画をちゃんと視聴してほしいという教授たちの言い分もわかります。ただ、アルバイトをしながら、いくつもの動画を視聴し、課題をこなし、対面授業も出席するのは正直キツいです。好きなYouTuberの動画でも20分以上あると気合いを入れて見ないと見られないのに、大学の授業を集中して60分以上みるのは辛いですよ。教授たちもYouTuberじゃないのだから、アナリティクスを使って分析したりしないでほしいですね(笑)」
短尺動画の流行や“流し見”に慣れたZ世代にとって、“倍速視聴”ができない大学講義の90分間に耐えることは、かつての大学生が感じた以上に苦痛なものとなっているのかもしれない。