一時1バレル=90ドルを大きく割り込んでいたNY原油先物価格は足元で90ドル半ばまで回復。代表的な商品市況の総合指数であるCRB指数は7月14日をボトムに下値切り上げの上昇トレンドに転換している。こうした背景から、7月のインフレ指標は大きく減速したものの、8月分以降は高止まりが想定される。また、7月雇用統計では平均賃金の伸びは予想に反してむしろ加速した。「インフレピークアウト→利下げ減速」までを織り込むのは時期尚早といえよう。
米連邦準備制度理事会(FRB)の高官からもけん制発言が相次いでいる。インフレ指標の発表後、米ミネアポリス連銀のカシュカリ総裁は「インフレとの闘いで勝利を宣言するには遥かに程遠い」と指摘。「政策金利は更に引き上げられた後、インフレが2%に低下するまで維持される」とも発言し、来年の利下げを織り込む市場を強くけん制した。市場とFRBが想定する今年末の政策金利予想にもかなり開きがあり、いずれ、市場の楽観は修正される可能性がある。17日のFOMC議事要旨で、こうした乖離が修正される可能性もあるだろう。
ここしばらく落ち着いた動きだった米10年債利回りは、11日、2.89%(+0.1pt)と大幅に上昇した。これに伴い、期待インフレ率の指標とされる10年物の米ブレーク・イーブン・インフレ率(BEI)を差し引いた実質金利は8月に入ってからの上昇基調をやや加速させている。米国で業績予想の下方修正が進むなか、予想一株当たり利益(EPS)は切り下がっており、株価上昇には投資家の期待値を表す株価バリュエーションのPER(株価収益率)の上昇が欠かせないが、実質金利の低下に歯止めがかかり、上昇に転じてきているなか、そうした展開は見込みにくいだろう。
一方、需給面では相場は短期的には底堅さが維持されると考えられる。市場関係者の多くは、足元の株式市場の上昇はベアマーケットラリー(弱気相場の中の一時的な上昇)に過ぎないと見ている。ただ、機関投資家の多くが夏休みに入るなか、市場参加者が限られ、相対的に個人投資家や短期売買のみを目的とした投資家の動きに左右されやすい地合いが続く。このため、相場に乗り遅れることを嫌った個人投資家の買いや、商品投資顧問(CTA)などの短期筋の追随買いで足元は上方向に振れやすい状況だ。週末の米国版SQまでは売り方の買い戻しが相場を下支えしそうだ。
今週は15日に4-6月期国内総生産(GDP)速報値、中国7月鉱工業生産、中国7月小売売上高、米8月ニューヨーク連銀景気指数、16日に米7月住宅着工件数、米7月鉱工業生産、17日に6月機械受注、7月貿易収支、米7月小売売上高、FOMC議事録、18日に米8月フィラデルフィア連銀景気指数、米7月中古住宅販売、19日に7月全国消費者物価指数などが発表予定。