なお、レールに使われた材料にも歴史があります。当初の鉄道では、多くの炭素をふくむ鉄の合金(鋳鉄・ちゅうてつ)で造ったレールが使われました。このレールはもろいため破損しやすく、頻繁に交換する必要があるという弱点がありました。
このため、鋳鉄よりも炭素の含有量が少なく、強靭で加工しやすい鉄の合金(鋼・はがね)が開発されると、レールの材料として鋼が使われるようになりました。現在の鉄道では、強度や耐摩耗性、耐食性に優れた特殊な鋼(高炭素鋼)で造られたレールが使われています。
現在私たちが利用している鉄道は、このような歴史と改良を経てできあがった輸送機関なのです。
【プロフィール】
川辺謙一(かわべ・けんいち)/交通技術ライター。1970年生まれ。東北大学工学部卒、東北大学大学院工学研究科修了。化学メーカーの工場・研究所勤務をへて独立。技術系出身の経歴と、絵や図を描く技能を生かし、高度化した技術を一般向けにわかりやすく翻訳・解説。著書多数。