ただ、週末には米8月雇用統計が控えていることから、週初の相場の反応がそのまま一方向に長続きすることはないと考えられる。米7月雇用統計では非農業部門雇用者数の伸びが予想を2倍以上回ったほか、平均賃金の伸びは前年比と前月比のどちらでみても、減速の予想とは対照的に加速した。下方硬直性のある賃金の伸びはインフレ抑制にとっては大きな悩みの種であり、8月分でも賃金の伸びに減速の兆しが見られなければ、9月の米連邦公開市場委員会(FOMC)での利上げ幅拡大への警戒感が高まるだろう。そのため、週初の反応がポジティブなものであったとしても、週後半からは次第に株式市場は伸び悩む展開が想定される。
ほか、中国で8月の購買担当者景気指数(PMI)が発表予定のほか、米国ではサプライマネジメント協会(ISM)による8月の製造業景気指数が発表される。欧米が景気後退へと向かう一方、対照的に中国が4月をボトムに景気回復へと向かうことで世界経済の下支えが期待されていたが、中国では行動制限の長期化や不動産市況の悪化で景気低迷が長期化している。7月に続き、指標が前月から悪化すると景気後退がより意識され、7-9月期以降の業績悪化懸念が強まることになるだろう。ISM製造業景気指数も7月は52.8だったが、活動の拡大・縮小の境界を示す50割れが近づいており、株式市場のリバウンドが一服しつつある中、指標の悪化は素直に嫌気される可能性があるため、注意したい。
需給面での追い風が止みつつあることにも注意したい。24日、東京証券取引所が公表した裁定取引に係わる現物ポジションでは、8月19日時点での買い残から売り残を差し引いたネットの裁定買い残は1兆1895億円と、前週から1338億円増加、2021年9月27日以来の高水準を記録した。買い残のみでは1兆4617億円で、2021年3月22日及び9月20日の水準を上回り、2019年以降では最高水準となる。日経平均は、買い残がピークを付けた上述の昨年3月と9月以降、下落傾向となっており、経験則からすると、これまでのような需給面での押し上げ効果を今後期待することは難しいだろう。日経ダブルイン<1357>の買い残が高水準にあるほか、日経レバETF<1570>の売り長が続いており、下値では個人投資家による買い戻しが支えそうだが、全体的には目線は下方向に傾きつつあると言える。
今週は30日に7月失業率・有効求人倍率、米6月S&Pコアロジック・ケース・シラー住宅価格指数、米8月CB消費者信頼感指数、31日に7月鉱工業生産、7月商業動態統計、8月消費動向調査、中国8月製造業PMI、中国8月非製造業PMI、9月1日に4-6月期法人企業統計、8月新車販売台数、中国8月財新製造業PMI、米8月ISM製造業景気指数、2日に米8月雇用統計、米7月製造業受注が発表予定。