加速する物価高の影響が各所に広がっている。なかでも急増しているのが物価高による倒産だ。帝国データバンクの調べによると、「物価高倒産」は調査を開始した2018年1月から2022年7月までで累計558件。2022年上期(1~7月)は116件と、例年を上回るハイペースで8月にも年間最多件数を更新しようとしている。
和菓子の「相国(しょうこく)最中」や「おこじゅ」で知られた有限会社「紀の国屋」も物価高倒産した一社だ。
紀の国屋の創業は1948年で、1952年に法人改組した後、東京多摩地域を中心に店舗を展開。最盛期だった2000年5月期には約18億5000万円の売上を計上していたが、今年5月に破産手続き開始決定を受けた。負債額は約13億円と見込まれている。
職人である社長に代わって、主に経営を担っていた息子で元専務の曽我部吉弘氏が語る。
「会社はもともと祖父が興した青果店が始まりでした。戦後の甘いものブームの頃に立川市で和・洋菓子店を開店しました。2代目の父が開発した『相国最中』や『おこじゅ』が成功し、百貨店などで23店舗を展開。しかし、1993年に新工場を建設したのが失敗で、地元の信金から融資を受けたのですが、バブルの終わり頃だったので金利が3%と高く、それが重くのしかかった。事業再建のための東京都の補助金申請も信金からの要請で取り下げとなり、金利は変わらず塩漬け状態でした」
そんななかで、新型コロナの流行が襲った。
「2020年は出店していたデパートの半分が閉店か休業となり売上が大きく落ち込みましたが、国の緊急支援の融資制度や雇用調整助成金などでなんとか持ちこたえることができました。そして昨年9月で緊急事態宣言が明けると売上が戻ったんです。この先もやっていけるかもしれないと希望が見えましたが、再び感染者数が増加。さらに、ここにきて材料費の高騰が直撃しました」(曽我部氏)