ロシアからの輸入ウエイトが高い非鉄金属や肥料
米国側の統計(U.S. Census Bureau, Foreign Trade Statistics)を確認してみると、上半期のロシアからの輸入額は112億ドルで全体の0.7%に過ぎない。ベルギーやスペインよりも若干少なく、オーストラリアやフィリピンよりは少し多いといった程度だ。金額からいえば、大したことはなさそうだ。
ただ、非鉄金属や肥料のように、ロシアからの輸入ウエイトの高い製品がある。そうした一次産品は、広範な製品に波及効果があり、供給が不足し市場価格が上昇してしまえば、インフレを加速させる大きな要因の一つとなってしまう。
結果として、ロシアからの輸入をゼロにはできず、6月単月でも、6億6100万ドルほどの輸入がある。
インフレ加速のリスクを抱え、ロシアからの輸入さえ完全には止めることができない。ならば、米国最大の輸入先で上期の輸入シェアが16.7%もある中国ならなおさらだ。政治的な思惑から対中強硬策をとろうにも、経済的な要因からそれには限界があるということだ。
もし、現在のインフレの要因について供給側の要因が支配的であったとしても、FRBは貿易問題を解決する権限を持たない。できることは金融政策に限られ、ひたすら金利を上げ、金融を引き締めるだけである。
もちろん、インフレの要因について、国際要因がどの程度を占めるのか、だれも正確には答えられない。とはいえ、国際的な緊張を緩和させ、サプライチェーンにかかった負荷をできるだけ軽減すれば、少なくともインフレは改善に向かうだろう。
米国株の下落トレンドを底打ち・反転させるカギは、FRBの金融政策ではなく、バイデン政権の対外政策にありそうだ。
文■田代尚機(たしろ・なおき):1958年生まれ。大和総研で北京駐在アナリストとして活躍後、内藤証券中国部長に。現在は中国株ビジネスのコンサルティングなどを行うフリーランスとして活動。ブログ「中国株なら俺に聞け!!」(https://www.trade-trade.jp/blog/tashiro/)も発信中。