世界的なインフレと超円安が日本の家計を直撃している。食料品や日用品、電気・ガス料金などの値上げが相次いでいる。資源・燃料から食品の原材料まで様々なものを輸入に頼る日本にとって、「日本円の価値が下がる=円安」は深刻な問題だ。年初には1ドル=115円台だったのが、7月には一時139円台を記録するという急激な円安進行が日本の物価上昇の大きな一因であることは間違いないが、事態はこの為替レートの数字から抱く印象よりもさらに深刻であるようだ。
7月中旬に1ドル=139円台に突入した際、多くのメディアは「1998年以来、24年ぶり」と報じたが、東短リサーチ・チーフエコノミストの加藤出氏は「日本円は過去40年で最も弱い状態にある」と指摘する。加藤氏は説明に際して、定食チェーン「大戸屋ごはん処」の「しまほっけ炭火焼き定食」の日本と米国での価格差を例に挙げた。
「現在、日本の大戸屋での『しまほっけ焼き定食』の価格は980円です。それに対し、大戸屋の米ニューヨークの店舗では本体価格が31ドル。チップで15%分上乗せすると35.65ドルになる。1ドル=136円で換算すると4848円となる計算です。ニューヨークの大戸屋が高級路線を打ち出している店舗だとはいえ、同じ『しまほっけ焼き定食』に非常に大きな価格差が生じている。これは、日本円での対外的な購買力が著しく弱まっていることを示すわかりやすい一例と言えるでしょう」
日本はバブル崩壊以降、物価が下がり賃金も頭打ちとなるデフレ不況に苦しむ「失われた30年」を過ごしてきた。その間に、緩やかなインフレと経済成長を果たしてきた国との差はどんどん広がり、そこに今年に入ってから急激な円安が拍車をかけた格好だ。