鉄道は、多くの人にとって交通の手段としてだけでなく、趣味や娯楽の対象としても親しまれており、ときに人々の知的好奇心を刺激してくれる。交通技術ライターの川辺謙一氏による連載「鉄道の科学」。第3回は「自動改札機の歴史」について。
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自動改札機は、駅における改札業務を自動化した機械であり、東京圏などの大都市圏の鉄道では、もはや欠かせないものになっています。
それでは日本の鉄道で最初に自動改札機が導入されたのは、いつでしょうか? その答えは、自動改札機の種類によって異なります。
日本初の自動改札機は「地下鉄」にあった
一般的に「日本で最初の本格的な自動改札機」としてよく紹介されるのは、今から55年前の1967年に京阪神急行電鉄(現・阪急電鉄)の北千里駅に導入された磁気式自動改札機です。乗車券の裏面に黒色または茶色の磁気記録層を付け、そこに記録された情報を読み書きする磁気式自動改札機が導入されたのは、これが世界で最初とされています。
ところが、その40年前にも、自動改札機を導入した鉄道会社が日本に存在しました。それが、日本初の地下鉄を建設・運営した東京地下鉄道(現在の東京メトロの前身)です。
東京地下鉄道は、1927年に浅草・上野間(現在の銀座線の一部)を開業させたときに、各駅にアメリカで製造されたターンスタイル式自動改札機を導入しました。日本の鉄道では、これ以前に自動改札機を導入した例がないので、東京地下鉄道が日本で最初に自動改札機を導入したと言えるでしょう。