今年前半、下落トレンドが続いていた米国株式市場は6月に底を打ち、大きく上昇に転じた。しかし、8月28日のジェローム・パウエルFRB(連邦準備制度理事会)議長の講演を境に、再び下落に転じているように見える。はたして、6月以降の上昇相場は“本物”だったのか、あるいは“ダマシ”だったのか。また、今後の値動きはどうなるのか。個人投資家・投資系YouTuberの森口亮さんが分析する。
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8月26日におこなわれたワイオミング州ジャクソンホールでの経済シンポジウム(通称・ジャクソンホール会議)。パウエルFRB議長の講演後に、米国株式市場が大きく下落し、マーケットにはリスクオフのムードが漂っています。
パウエル議長の講演内容は、FOMC(連邦公開市場委員会)の議事要旨に沿った内容であり、そこまで大きなサプライズはなかったように筆者は感じましたが、インフレが進行した1970、80年代や2000年代の教訓も踏まえて、物価安定の重要性を説いたことが、「景気配慮より、まずはインフレ退治」との強い姿勢と受け止められたのではないかと思われます。
結果として、8月26日のNYダウ終値は前日比で1000ドル以上、S&P500では3.37%、成長株中心のナスダックでは4%近い大幅な下落となりました。これまで市場では「FRBはそれほど利上げを続けないだろう」と予想されていましたが、それが覆されるような発言だったため、売りが先行したのです。
2022年に入ってからのアメリカ株式市場を振り返ってみると、1月から6月中旬まではインフレへの警戒と過度な金融引き締めによる景気後退懸念により、米国株式市場は約30%下落したのち、6月16日に一度底打ち。8月までは株価が上昇していました。
中小型株で構成され、先行性が高いと言われる「ラッセル2000」の6月安値からの上昇率は23.7%、ハイテク株や成長株中心に構成されるナスダックでは同期間で24.8%上昇していました。
一般的には上下20%の変動でブル(強気)とベア(弱気)が入れ替わる目安とされていて、この2つの株価指数では、すでにブル(強気)トレンド入りが期待できる上昇率(20%以上)となっていました。
しかし、米国で最もメジャーな指数であるNYダウの同期間の上昇率は15.6%、S&P500は18.8%と、どちらも20%に届いておらず、本当にブル(強気)トレンドに転換したかどうかは断定できません。