女性はいつまで家で料理し続けなければならないのか──。6月に発表された、博報堂生活総合研究所が20~69才男女を対象に実施している「生活定点」調査によれば、1998年には37.8%いた「料理を作ることが好きな方だ」という人は次第に減少し、2020年になると32%に落ち込んだ。中でも50代女性に特に強い減少傾向があり、女性年代別だと最下位となっているという。
2021年に20~69才の男女1500人を対象に行った「料理に関する生活者調査」で「料理が好きではない」と回答した女性は、こんな理由を挙げている。調査を担当した博報堂生活総合研究所 主席研究員の夏山明美さんが解説する。
「彼女たちに共通するのは、決して料理が“できない”わけではないということ。実際、『料理に関する生活者調査』において、『家に料理用の計量グッズがある』と回答した人は、50代女性が89%と最高値でした。『料理作りの知識や技能がある方だ』と答えた人も女性全体に比べて高い。50代女性は料理が得意であることが推測できる半面、“料理好き”と思っている人は少ない」(夏山さん)
調査によれば、50代の女性たちはほかの世代と比べても、熱心に料理に向かい合っていることがわかった。
「『一から作る手料理』や『手塩にかけた料理』を自分で作るのもこの世代の特徴です。さらに『おいしい料理を作ることは食べる人への愛情表現のひとつだ』『食べるのが自分ひとりだと、簡単で手早く作れる料理で済ますことが多い』と回答した人の割合もほかの世代と比較して高めです。
そうした調査結果からわかることは、彼女たちは家族のために愛情を込めてきちんと料理をしてきたからこそ、その重圧に疲れ、『もうやりたくない』と思っているのだと考えられます」(夏山さん)
自分自身で料理のハードルを上げない
料理が強いる負担と重圧から逃れる術はないのか──評論家で東京家政大学名誉教授の樋口恵子さんは料理にも「休暇」や「定年」があっていいと語る。
「自分のお腹を満たすよりもまず子供、そして夫のために食事を提供する。そんな生活を何千年も繰り返してきたから私たちのDNAには“料理は女性の義務である”と刻み込まれています。
しかし、寿命が延び、90才になっても“ヨタヘロ”と生き続けるいまの時代、サラリーマンの仕事と同じように、調理にだって一休みできるような“休暇”や、卒業する“定年”があってもいいのではないかと考えるようになりました」