日本電産は9月2日、日産出身の関潤社長兼COO(最高執行責任者、61)が辞任し、後任に小部博志副会長(73)が就任する人事を発表した。小部氏の就任はあくまで暫定的なものと見られ、創業者であり現CEO(最高経営責任者)の永守重信氏(78)は再び後継者問題に取り組むことになった。興味深いのは、永守氏が経営者として認める“ライバル”たちも後継者選びに苦労していることだ。
かねてより永守氏は、同じくカリスマ創業者と呼ばれるソフトバンクグループの孫正義社長(65)とファーストリテイリングの柳井正社長(73)の2人を「盟友」と呼んで慕ってきた。
3人とも壮大な経営目標を掲げることから“大ボラ3兄弟”とも呼ばれ、永守氏自身が〈3人のなかでは、私が一番ほらが小さいと思う〉(日経電子版、2016年6月21日付)とコメントしたこともある。
「企業同士の会合や表彰式なども含めて顔を合わせる場面がよくあるそうです。特に柳井氏は永守氏のことを『僕の先生』と呼んでいて、会社が抱える課題なども共有していると聞きます。強烈なトップダウンの経営手法も似ているので“類は友を呼ぶ”ということなのでしょう」(経済ジャーナリストの森岡英樹氏)
そして、「後継者選び」についても似ているところがある。
ソフトバンクGの孫氏は、2014年にグーグルの最高幹部だったニケシュ・アローラ氏をヘッドハンティングして副社長とし、「もっとも重要な後継者候補」と公言していたが、後に撤回し、アローラ氏は退職。その間の報酬総額が300億円超であったことが話題となった。最近でも、孫氏が招聘したマルセロ・クラウレ副社長ら側近役員が続々と退社している。
「孫氏は最初、『60歳で引退する』と言っていましたが、その後、『60代で後継者に引き継ぐ』に変わり、現在は『70歳を過ぎても健康なら、経営を続行したい』と言っています」(同前)
もう一人の柳井氏もかつては「60歳で引退する」と公言し、日本IBMから転じてきた玉塚元一氏を2002年に社長に据えたが、3年弱で退任させ、自ら社長に復帰している。
「玉塚氏が就任した2002年当時は、急成長に伴う歪みが露呈してきていた時期で、玉塚氏は残業代やコンプライアンスの問題などの事業リスクを是正して、組織固めを優先させた。ところが、柳井氏はアパレル世界一になるという思いが非常に強い。『ここで止まるわけにはいかない』といった考えもあってか、再びトップの座に就きました」(『経済界』編集局長の関慎夫氏)