相続税対策の王道と言われているのが「不動産」の活用だ。しかし、その道が塞がれるかもしれない。これまで「賢い節税法」として親しまれていた「マンション節税」に衝撃的な司法判断が下された──。【前後編の前編】
都内に住む70代男性は、相続税対策としてマンションの一室を購入したという。
「もう歳だし2人の息子への相続も考えないといけないなと知人と話していたところ、マンションを買うのがいいとアドバイスされました。不動産なら、1億円の物件が相続時に3000万円ほどの評価になり、預貯金のままでの相続より税金が断然少ないというんです。
税理士にも相談したら不動産購入がいいと言うし、結局それで銀行から融資を受けて駅前の物件の一室を購入しました。息子たちの税負担が軽くなるなら嬉しいです」
2015年の税制改正で基礎控除額が大幅に下がり、相続税の課税対象者は倍増した。相続税がより身近な税金となるなか、この70代男性のように相続税対策で不動産を購入する人が近年増えている。
その理由について、『ホントは怖い相続の話』などの著書がある税理士法人レディング代表税理士の木下勇人氏が語る。
「不動産の相続において、土地については時価よりも安い路線価、同じく建物は固定資産税評価額を基に評価されます。そのため不動産は実際の購入額よりも低い金額で相続時に評価される。額面通りの評価となる現預金より財産を圧縮できるので、相続税を安く抑えられるケースがあるのです」
それゆえ、不動産購入は相続税を節税するための“王道”とされる。
さらに、手元に現金を残しながら相続税を抑えられる可能性もある。
「金融機関から借り入れなどをして不動産を購入すれば、相続時に現預金や不動産などのプラスの財産から債務としてマイナスできます。それによって課税資産額が小さくなるのです」(木下氏)