中国が続けている不動産投機への抑制政策
不動産市場の低迷については、海外ではバブル崩壊ではないかといった見方も多い。
しかし、不動産投機に対する中央、地方の抑制政策は10年以上前から実施されている。例えば、北京市に関して、現地に戸籍を持つ者、正規就業者だけに購入を制限したり、2件目以降の物件購入を厳しく制限したりする“商品房限購令”が発令されたのは2010年であり、上海でも2011年には発令されている。
不動産神話は庶民の意識の中に強く根付いており、需要を押さえつけるのは困難だ。当局は慎重にマクロコントロールを行っており、不動産価格が漸進的に上昇することを容認する穏健な抑制政策をとり続けている。
投機的商品としての不動産である高級物件については確かに問題があるだろう。ただ、その部分については、2020年夏以降、徹底的に投機を潰す政策が打ち出されており、恒大集団を筆頭に、投機的物件の販売を積極的に行う一部の不動産企業に対して強制的に事業の縮小を迫り、大きな成果を上げている。
投機商品の所有者のほとんどが、複数の物件を保有し、含み資産は大きい。そうした一部の富裕層の過剰な資産を圧縮することによるバブルの縮小は連鎖が生じにくい分だけ経済への影響は小さい。
もちろん、庶民の中にも、規制の網を掻い潜り、複数の住宅を所有する者も少なからずいる。しかし、現状では、不動産価値が大きく目減りするような状況とはなっておらず、ゼロコロナ政策による需要、供給両面からの影響で被害が拡大した爛尾楼問題(*)についても、全体の物件数との比較では小規模だ。
【*爛尾楼問題/中国で建設途中で未完成のまま放置されている物件に対して、購入者たちが不満を持ち、住宅ローン返済を拒否する事案】
バブル崩壊において、最大のリスクは銀行にある。しかし、中国の銀行組織は特殊であり、一部の例外を除き、実質的な国有銀行である。大手行のトップは中国人民銀行からの天下りであり、あらゆる銀行において、共産党員でなければ幹部に登用されることはほぼない。
共産党による党員への統制は厳しく、共産党が決定する経済政策は銀行の経営方針に直結する。何があっても、貸し剥がし、貸し渋り、信用収縮の連鎖は未然に防がれるのではないか。