全国の動物愛護センターに引き取られる犬猫の年間総数は7万2433頭(2020年度)。うち2万3764頭、1日当たり65頭余りが殺処分されている。看過できない問題を抱えた動物保護問題に一石を投じようと、愛犬家として知られるタレントの坂上忍(55)が動き出した──。
2メートルを超える黒い塀に囲まれたその家は、まるで要塞のような佇まいだった。門扉をくぐると、目に飛び込んでくるのは約1万5000平方メートルの敷地に、約2000平方メートルの悠々としたドッグラン。坂上が建設した「さかがみ家」だ。
「動物たちにとってゆとりある環境を作りたいと思って、この10年間、バラエティの仕事でがむしゃらに稼いだ分を注ぎ込んでいます(笑)。今のところ、ノー借金です」(坂上)
私生活でも保護犬や猫を引き取り育てているが、自身がMCを務める動物番組などを通じて保護活動を学び、構想5年を経て事業に乗り出した。目指すのは自力運営。寄付やボランティアに頼らざるを得ない動物保護の世界に一石を投じる。
高まる動物愛護の精神から、飼育放棄された動物の「殺処分ゼロ」が謳われ、年々その数は減っている。一方で、保護団体の負担は重い。増え続ける保護動物の数にケアする人員やスペースの確保が追いつかず、より多くの動物を救うために、寄付やボランティアに頼る団体は少なくない。
「日本に寄付文化がもっと根付いた方がいいとは思っていますが、『寄付で何とか成り立つ』という事業は特殊だし、それでは長続きしない。もっとうまいやり方があるはずだと模索していたのです」(同前)
業界を正そうという気持ちはない。あくまで持続可能な事業として「さかがみ家」を運営したいという。