契約している保険会社からお金を借り、返済せずにいたら「保険が失効になる」と連絡があったという。そのようなことはあり得るのか。弁護士の竹下正己氏が、実際の相談に回答する形で解説する。
【相談】
10年ほど前になりますが、保険会社からお金を借りました。当初は契約している貯蓄型生命保険を解約してお金をつくろうとしたのですが、保険会社の担当者に「解約するともったいないので、借りた方がいい」と言われたためです。
その後、返済は少ししかしていません。すると、保険会社から「利息が増えてしまったので、このままだと保険が失効します」と言われました。本当に保険が失効してしまうのでしょうか。教えてください。(神奈川県・56才・会社員)
【回答】
まずは「保険約款」をよくご覧になるのがよいでしょう。多くの生命保険では、保険契約の解約返戻金がある場合には一定の範囲で保険契約者に融資する制度があります。これを「契約者貸付」といいます。
契約者貸付は普通の借金と違い、返済期限の定めはなく、返さなくても死亡保険金や解約返戻金から精算されます。契約者貸付を受けても生命保険契約はそのまま継続しますが、返済しないと所定の利率の利息が発生し続けます。
契約者貸付の利率は銀行融資に比べて高く、しかも利息は翌年に貸付元本に繰り入れられて利払いの対象になる複利式です。返済や利払いをしないままだと契約者貸付が増えていきますが、保険料の支払いをしなくても解約返戻金がある間は、自動的に保険料が貸し付けられて支払われることになっており、保険契約は継続します。
しかし、増額していった契約者貸付の元利金が、その生命保険の解約返戻金の額に達すると、大抵の場合失効を予告して保険料の督促がされます。それでも、保険料を支払わないと保険契約が失効します。
もっとも保険契約は、いったん失効しても、約款で定める3年などの一定期間内に、失効期間中の保険料を支払い、保険会社が承諾したときは、本件契約を元に戻せます。これを「保険契約の復活」といいます。