現在、世界中で顕在化している「生理の貧困」という問題。経済的な理由から生理用品を購入・入手できない女性の存在がクローズアップされるようになった。生理に関する啓発に取り組む任意団体「#みんなの生理」の調査(2021年)によると、「日本の女子学生の5人に1人が、金銭的理由で生理用品の入手に苦労したことがある」という実態が明らかになっている。
また、厚生労働省が今年2月に実施した「『生理の貧困』が女性の心身の健康等に及ぼす影響に関する調査」によると、生理用品が手に入らない際の対処法は、「生理用品を交換する頻度や回数を減らす」、「トイレットペーパーやティッシュペーパー等で代用する」などの回答が上位を占めており、心理的な苦痛だけでなく、衛生面の影響も懸念されている。
彼女たちが生理用品を入手できない背景にあるのは、経済的な理由だけではない。「シングルファーザー世帯で娘の生理について話し合える空気がない」、「中学、高校生の娘の生理に対して、親が生理用品の費用を負担しない」といった事例もあり、家族間のコミュニケーションの問題も横たわっている。また、生理用品がないために学校や仕事を休まざるを得ない女性も存在し、社会にとっても大きな機会損失につながっている。
「先生、ナプキンをいただけませんか」
都内の私立大学に勤務する女性教員・Aさん(40代)が、学生たちにとって生理用品購入が負担になっている実態を明かす。
「2020年度の学生生活調査結果によれば、日本学生支援機構などの奨学金を受給している学生は、大学(昼間部)に通う学生のうち49.6%、つまり約半数を占めています。アルバイトをしながら一人暮らしをする女子学生にとって、毎月生理のたびに購入しなくてはならない生理用品は大きな経済的負担です。
1週間以上も生理が続く人はいますし、出血量は人によって個人差があるため、一人ひとり、必要なナプキンの数は異なります。過去には、ゼミの女子学生が『先生、すみません、ナプキンをいただけませんか』と尋ねてきたこともあります」(Aさん)
Aさんは、「生理の貧困」問題の背景にあるのは経済的事情だけではなく、表面化しづらい家族の問題も横たわっていると分析する。
「経済的な問題に加えて、親子間のコミュニケーションの問題もあると感じています。過去に学生から聞いた事例だと、『母から“生理の話はしたくない”と言われた』、『親に生理の相談をしたら“汚いからやめて”と言われた』といったものがありました。そうした女子たちは、家庭内で生理のつらさや不安を相談できる人がいないという不安を抱えています。
現在、私が勤務する大学には、生理用ナプキンの無料提供サービス『OiTr(オイテル)』が導入されていますが、こうしたサービスが大学だけでなく、中学校や高校、公共施設に広がっていけば、『生理の貧困』問題に直面する女子たちにとって、ひとつの安心材料になると思います。『ここに行けば、とりあえずナプキンは手に入る』と。その意味でもどんどん普及してほしいと願っています」(Aさん)