孫氏の日本版アマゾン構想についてソフトバンクに聞くと、「弊社は戦略的投資持株会社であり、各事業は各事業会社がそれぞれの意思決定で展開しています」(ソフトバンクグループ広報室)とのことだった。
戦いを挑まれる三木谷氏はどう立ち向かうべきか。坂口氏が語る。
「楽天の最大の武器は、これまで顧客に発行した1億以上のIDです。このビッグデータを分析し、ネット通販から楽天トラベル、そしてまだ開拓していない『エンタメ』の分野などに顧客を誘導できれば、早々にソフトバンクに飲み込まれることはないはず。アマゾンもプライムビデオなどエンタメと結びつくことで一層の躍進を遂げましたからね。膨大な個人情報の分析が、楽天の生き残りの鍵を握ると思います」
孫氏と三木谷氏。この2人は日本のIT経済を牽引してきた両輪だった。
ともに米国で経営を学び、ITを武器に旧態依然の日本経済界に立ち向かった。
2004年9月に楽天がプロ野球に参入すれば、同年12月にソフトバンクも参入。携帯電話事業ではソフトバンクが2006年に通話0円、メール0円の「予想外割」を始め、2014年後に三木谷氏が再び通話料、通信料0円の「ZERO宣言」で携帯市場に殴り込んだ。
「強い企業を買収して勢力を拡大する孫氏と、小さなものを大きく育てる三木谷氏は、経営理念こそ違うが、常に互いを意識してきた」(全国紙経済部記者)
合わせ鏡のようにしのぎを削り続けてきた2人がいま、対角のコーナーに立つ。
2大巨頭の最終戦争が始まろうとしている。
※週刊ポスト2022年10月7・14日号