田代尚機のチャイナ・リサーチ

日本とは事情が異なる いまも金融緩和を堅持する中国の金融システムの特異性

為替市場では当局が日常的に介入できる

 西側諸国の中央銀行は、主に貸出金利や通貨供給量を操作することで金融政策を行うが、中国はそれだけではなく、銀行経営の自主権に当たる部分にまで踏み込んで金融を操作している。

 香港市場はもともと、欧米金融機関によって作り上げられた、世界で最も自由な市場の一つである。本土金融市場は、適格機関投資家に対しては、当局の厳しい監督管理の下に、限定的に開放されており、個人投資家に対しては、香港市場を介する形で、枠を設けてその範囲内で、限定的に取引を認めている。

 資金移動について、国際収支勘定で説明すると、事業に絡む、いわゆる経常取引勘定は自由化されているが、投資に絡む資本取引勘定は自由化されていない。個人は資金を自由に海外に送金することは難しい。それでも、監督管理が緩んでいる間は留学する子息、海外で生活する親戚などへの送金に紛れ込ませるなどして、何とかできないこともないが、厳しくされればどうにもならない。為替市場(銀行間外貨取引市場)は現在でも実質的には管理フロート制であり、当局が日常的に市場介入できる仕組みが市場システムの中に組み込まれている。人民元高方向に振れてはいるが、当局の許容する範囲内での動きに留まっている。

 人民元安による資金流出を懸念する見方もあるが、こうした中国の金融システムの実態を考えれば、少なくとも自由度の高い日本ほどには心配する必要はないのかもしれない。

 グローバル金融市場は米国の金融政策に振り回されているが、中国金融市場は相対的に言えば米国の影響は小さい。リスク分散の先として、中国金融市場を有望視することもできるのではないだろうか。

文■田代尚機(たしろ・なおき):1958年生まれ。大和総研で北京駐在アナリストとして活躍後、内藤証券中国部長に。現在は中国株ビジネスのコンサルティングなどを行うフリーランスとして活動。ブログ「中国株なら俺に聞け!!」(https://www.trade-trade.jp/blog/tashiro/)も発信中。

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