今春以降急速に進んだ円安が、日本経済に深刻なダメージを与え続けている。7月中旬には為替相場が一時1ドル139円台に突入し、24年ぶりとなる円安を記録した。
そもそも、円安はなぜ起きたのか。経済学が専門の真壁昭夫・多摩大学特別招聘教授が解説する。
「円安・ドル高が進行した大きな理由の一つは、日本と米国の金利差が拡大したことです。米FRB(連邦準備制度理事会)がインフレ対策として利上げをする一方、日銀は金融緩和策を続けるために金利上昇を抑え込んでいる。一般的に為替相場では、金利の低い通貨から高い通貨へと投資資金が移動します。現状、主要投資家は金利が低い円で資金を借り、金利収入が期待できるドルを買っている。それにより円売りが増加し、円安の流れが強まったのです。
日本の貿易赤字が拡大したことも、円安の大きな要因です。日本の輸入企業は海外への支払いに充てるドルをより多く調達する必要があるため、円売り・ドル買いの動きが加速し、円の下落を招くことになります」
為替相場は7月末に1ドル132円台に戻したが、その後も130円台前半で推移している。今後、この円安状況は改善されるのか。東短リサーチのチーフエコノミスト・加藤出氏が言う。
「円安が一本調子で進む局面ではなくなったものの、円高局面に転換したと考えるのは時期尚早です。FRBが利下げに転じるのはかなり先と予想されるからです」
エネルギーから食料まで、あらゆる物品を輸入に頼る日本では円安による物価高が顕在化してきている。一方、世界各国でもインフレが進行中だ。
米国のインフレ率は今年5月に40年ぶりの高水準に達した。そのスピードは凄まじく、消費者物価指数はわずか1年で8.6%も上昇した。旅行系YouTuberのSU氏が言う。
「7月にグアムに行くと、ハンバーガーのセットが14ドル(約1860円=8月15日時点のレートで換算)、コンビニで買う500mlのコーラは1.8ドル(約239円=同)に値上がりしていました。レストランでの食事はモーニングセットが約2000円と、日本の倍くらいの感覚。
現地の人は給料も上がっていますが、日本人は給料が上がらないうえに為替が円安となり、ダブルパンチです。かつてグアムは『ハワイの半額で行ける』ことが売りでしたが、気軽に行ける観光地ではなくなってしまった。
現地の両替所には日本円の表示がないことも。代わりにスイスフランや豪ドル、シンガポールドルなどが躍り出ているのを見ると、円が弱くなったことを実感させられます。同じようなことは、バンコクやソウルでの滞在でも感じました」