欧米諸国が利上げを加速させる中、日本、中国は金融緩和政策を堅持している。日本は、巨額の国債発行残高、財政赤字を抱え、金利上昇による更なる財政悪化はいかにも辛い。新型コロナ禍の影響が大きく、依然、経営環境の厳しい零細中小企業が金利上昇に耐えられない。
円安に頭を悩ませる日本銀行だが、諸外国と比べればインフレは厳しくない。できるかどうかはともかく、何とか金利を上げないでやり過ごすつもりなのだろう。
中国はどうだろうか。中国の行政の仕組みは日米欧とは大きく異なっており、金融行政の独立性は低い。金融政策は、あくまで国務院が策定する大きな政策の枠組みの一部に過ぎない。
現在、経済政策の大方針は5月末に国務院が発布した“経済をしっかりと安定させるためのワンパッケージ政策”だ。
これは、いわゆる総合経済政策で、【1】財政、【2】金融、【3】投資を安定させ消費を促進させる、【4】食糧、エネルギーの安全を確保する、【5】インダストリアルチェーン、サプライチェーンの安定を保つ、【6】基本的な民生を確保するといった6つの方面から合計33項目の措置が示されている。
そして金融政策では5項目が明示されている。以下、紹介する。
【1】中小企業や個人営業主、トラック運転手などに対する貸付や、新型コロナ禍の影響のある個人住宅ローン、消費者ローンなどに対して元本返済、利子支払いの延期を奨励する。
【2】国家が税制優遇、減免措置を与える零細企業に対して支持を強化する。
【3】実質的な貸出金利を安定させた上で、引き下げを続ける。
【4】資本市場における資金調達力を引き上げる。
【5】金融機関によるインフラ設備建設、重大プロジェクトに対する支持を強化する。
経済の弱い部分に対する金融面からの支援を強め、かつ、国家が進める投資拡大政策を積極的に支援するということだ。