一般に「薄毛」というと、男性の場合は頭頂部の髪が抜けるタイプと、額の左右が抜けるM字型脱毛がほとんどだが、女性の場合は、頭頂部が広範囲に薄くなって地肌が見えてくる「びまん性脱毛症」が大半だ。
いつも同じ場所で分け目を入れていると、その部分から薄くなってきたと感じる人が多い。ポニーテールなどで無理に髪の毛を引っ張るヘアスタイルを続けることが原因で、生え際から抜けやすい「けん引性脱毛症」も目立つと、田中さんは言う。
女性ホルモンの低下が薄毛の主な原因
「男性の場合は男性ホルモンが大きく影響しているのに対し、女性の場合は複雑な要因が組み合わさっていることが多い。とはいえ、加齢による女性ホルモンの低下が主要因ですので、更年期症状が始まる40代になってから薄毛・抜け毛に悩む人が増えてくるのは当然の結果でしょう。
髪の毛には【1】毛が生え始める成長期【2】成長が終わる休止期【3】毛が抜ける退行期という3つの周期があります。女性ホルモンのエストロゲンには成長期を維持させる機能があるため、更年期に入ってエストロゲンの分泌が減ると成長期が短くなり、髪が早く抜け落ちてしまうのです。若い人でも出産後に一時的に抜ける『分娩後脱毛症』がありますが、こちらも女性ホルモンが関係しています。
このほか、過度なストレスも髪の毛にダメージを与えやすい。ストレスを受けてコルチゾールというストレスホルモンが分泌されると、活性酸素を増やして、毛根にある毛母細胞をダメにしてしまい、抜け毛が進むのです。
ストレスは自律神経や女性ホルモンのバランスの乱れも引き起こすので、薄毛につながります」(田中さん・以下同)
実際に薄毛・抜け毛の原因は「ストレス」と考えている人が最も多く、食生活や睡眠などの生活習慣にあると回答した人が多いのも、体調と毛髪の関係について実感しているからなのだろう。
栄養不足が頭皮と毛髪に悪影響をもたらす
「栄養不足も大きな要因の1つ。無理なダイエットで栄養不足や貧血を起こすと、抜け毛が進みます。髪の毛の約90%はケラチンというたんぱく質の一種でできています。たんぱく質不足は薄毛に直結します。髪を増やすには、たんぱく質の合成に必要な亜鉛、ビタミンB1、パンテノール(パントテン酸)といわれるビタミンB5、L-システイン、葉酸なども大事です。たんぱく質を意識してバランスよく食事をとるといいでしょう」
亜鉛は生がき、ビタミンB1とB5、L-システインなどは肉類や卵、大豆、乳製品などに豊富に含まれている。