離婚する際には、それまで共有していた財産をどう分けるかということが問題となることもある。それは負の財産についても同様。離婚協議を進めている間に、もしも相手が自分のカードで借金をしていることが判明した場合、どうなるのか。弁護士の竹下正己氏が実際の相談に回答する形で解説する。
【相談】
息子夫婦は結婚して約20年ですが、離婚届に捺印しており、いつでも提出できる状態です。ところが嫁に借金があることが発覚。しかも、息子名義のクレジットカードでキャッシングをしており、合計300万円ほどです。生活費はきちんと渡していたようなので、借金は嫁が自分のために使ったものです。嫁は派手好きで服やバッグをよく買っていました。離婚した場合、息子のカードで借りたお金は、息子が返済しないといけないのでしょうか。嫁に返済させるにはどうしたらよいのでしょうか。(東京都・67才・主婦)
【回答】
クレジットカード会社は貸金業者ですから、貸金業法により貸付限度額について総量規制を受け、その限度額は、銀行などの金融機関を除いた貸金業者全部の住宅ローン等以外の合計で年収の3分の1までです。息子さんが高所得者でなければ、立て替え金の300万円にはキャッシングのほか総量規制の対象外であるショッピングの立て替え金も含まれていると思われます。
まず、カード会社に対する借入金や立て替え金の返済ですが、仮に妻が夫の財布からカードを抜き取り、盗み見た暗証番号を使ったとしても、カードはカード会社が貸している物として会員には管理規約でその管理や暗証番号の秘匿が要求されています。そのため、カードの紛失・盗難による不正利用の場合でも、支払い責任を負う旨が約束されています。
もっとも会員規約では、不正使用発覚後速やかに警察に届け出るなどの条件の下に、カード会社が不正使用による会員の損失を補填する約定になっていますが、会員の家族や同居人による不正利用に起因する場合は補填されません。息子さんはキャッシングの責任を免れないと思います。