しかし、日常買わないような高額商品のショッピングの立て替え金については検討の余地があります。夫名義のカードを使った商品等の購入契約は、販売店と夫を代理した妻との契約になります。日常生活に必要な買い物については、夫婦は連帯して責任を負いますが、その範囲を超えた高価な買い物では、妻に夫を代理する権限がないと売買が無効になり、夫には責任がありません。そのようなケースのカード利用で、立て替え金の支払いをリボ払いや月賦にしている場合は、夫が販売業者に対して主張できる事由をカード会社に対しても主張できます(抗弁の接続)。
妻への請求ですが、家事に必要ない買い物やキャッシングの範囲を超えたカードの利用によるものは妻が自分のために使ったと推測され、その立て替え金については妻に負担を求めることができます。今後の離婚協議において、婚姻後築いた実質的な夫婦共有財産の分配(財産分与)を決めるときに清算することが考えられます。分けるべき財産がない場合には、妻から取り立てるほかありません。
カードを回収して暗証番号を変えてこれ以上の被害を防ぎ、次に使用明細を整理して、弁護士など専門家にクレジット会社への対策を相談するとともに、今後のお嫁さんとの協議に備えてください。
【プロフィール】
竹下正己/1946年大阪生まれ。東京大学法学部卒業。1971年弁護士登録。
※女性セブン2022年10月20日号