農水省に聞くと、「1000億円ほどの被害が出ているのではないかという報道があることは認識していますが、農水省で算出しているのはシャインマスカットの100億円だけです」(輸出・国際局知的財産課種苗室)との回答だった。
こうした事態に手をこまねいて見ているわけにはいかない。今年4月、改正種苗法が施行されたが、これにより、新品種の育成権利者の許諾なしに指定された地域以外で栽培したり、無断で海外に持ち出したりした場合は、生産・販売の差し止め対象とすることが可能になった。10年以下の懲役、1000万円以下の罰金を科すこともできる。また、来年には育成者権の管理や活用などを専門に扱う育成者権管理機関も設立予定で、遅ればせながら、国も育成者の権利保護に乗り出した。
「農林水産物・食品の輸出は2012年から9年連続で前年を上回っていて、とくにフルーツの伸びしろはまだまだある。ブドウは輸出額がこの10年で10倍以上にまで伸びています。そのため中国や韓国があたかも先に出した新品種のように見られないよう、流出前に世界に向けてブランディング戦略を構築しておくことが重要です。
9月にも2022年の初競りで一房150万円の値がついた高級ブドウ『ルビーロマン』の苗木が韓国に流出してしまったことが明らかになりました。DNA検査でスピーディーに証拠をつかめるようにはなったが、重要なのはその後。流出に対するさらなる厳罰化と差し止めをするために政府が積極的に動いていく必要があります」(黒坂氏)
日本が誇るフルーツブランドの海外流出を食い止められるか。(了)