生活保護申請書の一例。本来なら、住所と名前、申請理由と申請の意思がはっきりしていれば、チラシの裏面に手書きしたものでも、口頭でも申請は可能
生活保護を申請すると、本当に適用資格があるか調査される。その際、親族に「仕送りをすることはできますか」と手紙が送られる「扶養照会」という手続きがある。生活が苦しいことを親族に知られたくない人にとって、これが申請をためらう大きな要因になっていた。
「もともと、親族と長年音信不通だったり、DVなどのトラブルがあったりと、扶養義務の履行が期待できない場合は、照会は義務ではありませんでした。これが昨年、そうした場合は扶養照会をしなくていいと、明確に通知されたのです。また、本人が扶養照会を拒否する場合、その意向を活かす方向で、よく事情を聞かなければならなくなっています」(小久保さん・以下同)
小久保さんは、高齢な人ほど、生活保護への忌避感が強いと話す。「世間に迷惑を掛けたくない」という気持ちが強く、体を壊しながらも働き続けて、ギリギリの生活をしている高齢者が多いのではないかと語る。
「昨年、老老介護の80代の姉妹が、周りから生活保護をすすめられていたのにもかかわらず拒否し続け、最後には妹が姉の顔にウエットティッシュをかぶせて窒息死させてしまった事件がありました。また、生活保護の申請の仕方を知らないまま生活に困窮し、20代の息子が50代の母親に“殺してほしい”と頼まれて殺害してしまったケースもある。いずれも、生活保護を受けていれば避けられたかもしれない事態ではないでしょうか」
いまは元気に働けている人や、充分なお金がある人でも、いつ生活保護が必要になるかは、誰にもわからない。必要になったら、当然の権利として、正しい手続きのもと受け取るべきだ。先行きが不透明で、不安だらけの世の中だからこそ、本当に苦しくなったとき、頼れるものがあることを、忘れないでおいてほしい。
※女性セブン2022年10月27日号