厚生労働省が10月7日に発表した統計によると、8月の時点で実質賃金は前年比1.7%減で、5か月連続の減少。異常な物価高が鎮静化する兆しもなく、老後の不安は膨らむ一方だ。経済的に、生活が立ち行かなくなる恐れもある。
もし、本当に苦しいときが来てしまったら、迷わず生活保護を使ってほしい。「周囲に知られたら恥ずかしい」「税金なのだから、自分たちよりももっと苦しんでいる人が使うべき」などと思う必要はない。生活保護問題対策全国会議事務局長で弁護士の小久保哲郎さんは、最悪の事態になる前に、生活保護を受けてほしいと訴える。
「コロナ禍の緊急小口資金といった特例貸付があったため、生活に困窮している世帯が増えている一方、生活保護受給者は減っています。しかし、来年1月からはこれらの特例貸付の償還(返済)が始まる。つまり、特例貸付でなんとか食いつないでいた人たちが追い込まれるようになる可能性が高いのです」(小久保さん・以下同)
年金を受け取っていても、収入や預貯金が最低生活費を下回っていれば、生活保護は問題なく受けることができる。
「最低生活費は地域によって異なります。大阪市を例に挙げると、ひとり暮らしの高齢者の生活費に当たる『生活扶助費』は月約7万円で、家賃に当たる『住宅扶助費』が約4万円。合計約11万円が最低生活費となり、収入がそれ以下であれば生活保護が適用されます」
仮に、月5万円の年金を受け取っているとすると、支給額は差額の6万円になる。こうした年金収入に加え、労働収入がある場合も、支給額から差し引かれる。
「生活保護費から収入を差し引くことを『収入認定』といい、労働収入は基礎控除がありますが、年金は全額が収入認定されます」
例えば、月3万円のパート収入があると、1万6400円が基礎控除され、残りの1万3600円が収入認定されるという仕組み。つまり、働いて得た収入の場合は、その額に応じて決められた基礎控除分は手元に残る。