吉田みく「誰にだって言い分があります」

「我が家には無理」と旅行計画を断念する主婦も 全国旅行支援が浮き彫りにする家庭格差

各都道府県が旅行需要喚起のための専用サイトを開設(写真は東京都)

各都道府県が旅行需要喚起のための専用サイトを開設(写真は東京都)

割引がなくても旅行に行ける余裕があった?

 ユミコさんがお金にシビアになっているのには、ローンだけでなく夫のお小遣い事情も関係していた。ストレスの多い職場で働く夫の楽しみはタバコを吸うこと。1箱500円を超えるタバコを毎日2箱も吸っているそうだ。月3万円のタバコ代と昼食代2万円で5万円を渡している。一時期は禁煙することを強く望んだものの、「俺のストレスも理解してくれ」と拒否されたそうだ。

「本音としては、夫に少しの間だけでもタバコ代を節約してもらい、旅行代を貯めて家族全員が楽しめる旅行へ連れて行ってほしいです。私だって美容院も我慢して毎日働いていてストレスが溜まります。そんな精神的に追い詰められた状況でのママ友の幸せそうな投稿は、心にグサリときてしまいました」

 しかし、落ち込んでいたユミコさんに転機が訪れた。なんと夫が全国旅行支援を利用して旅行へ行こうと提案してくれたのだ。旅費は夫がお小遣いを節約して捻出する代わりに、予算は家族全員で1泊2万円(全国旅行支援割引後の価格)と提示されたそうだ。久しぶりの旅行に心躍るユミコさんだったが、現実を突き付けられることとなる。

「旅行代金の40%が割引になると聞いていたので高級宿でなければ色々と選べると思っていましたが、旅行サイトを見てみると、どの宿も家族4人で合計5万円を超えるところばかり。そして悲しいことに、探していたサイトでは受付上限に達して終了のお知らせが……。誰でも気軽に割引を使って旅行へ行けるわけではないんですね。せっかくの旅行計画は断念することにしました」

 旅行の件は仕方がないと思えたものの、ユミコさんはママ友にある疑念を抱いてしまい、再び心がざわつくこととなる。

「……ということは、今、割引を使って旅行へ行けているママ友は、全国旅行支援が決定する前から予約を押さえていて、後から割引申請をしてお得に宿泊できたということですよね。そもそも割引がなくても旅行に行ける余裕があったんだと気づいてしまいました。コロナ禍になってから旅行が話題に上らなかっただけで、他のママ友も旅行に行っていたのかもしれません。改めて、格差を感じた瞬間でした」

 ショックを受けている様子のユミコさんだが、今後もママ友のSNSはチェックしていくという。理由を聞くと、「自由に使えるお金もないし、SNSを見て時間つぶしするくらいしかありませんから」と自嘲気味に笑っていた。

 全国で盛り上がりを見せている全国旅行支援。割引額が大きくメリットが多いものの、家庭の事情によりその恩恵が受けられない人もいるようだ。そもそも旅行に行く余裕があるのかどうかで、格差が浮き彫りになっている側面もあるのかもしれない。(了)

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