10月11日から政府は水際政策を緩和した。コロナ前にインバウンド消費の約4割を占めていた中国は海外帰国者に10日間の隔離期間を設けているため、本格的な回復は先と見られるが、すでに京都市内には中国語を話す観光客が確認できた。その裏で、中国資本による不動産買い占めが過熱している。地元の不動産業者はこう話す。
「中国で京都の人気は高く、問い合わせが増えています。一軒家だけでなくマンション1棟を丸ごと購入する人もいる。円安のおかげで、北京や上海で物件を買うより安いそうです。京都市の新景観政策により高層マンションの建築が厳しく、供給が限られていることもあり、今後中国人観光客が増えると価格高騰は加速するとみられています」
購入は投資目的が多く、中国人をはじめとした海外観光客向けの宿泊所として運用されるケースも多いという。
京都市が公開している「旅館業法に基づく許可施設」によると、コロナ禍の令和2年から今年の8月末の約2年半で、京都市が開業の許可を出したのは約750施設。そのうち、8割以上が「簡易宿所」である。簡易宿所とは「一般的な旅館やホテルと比べると小規模な宿泊施設で、カプセルホテルや1棟貸しの施設を指す」(旅館業の申請を審査する京都市医療衛生センター)といい、京都市内の至る所にある。
約750の宿泊施設のうち、外国人、もしくは外国人が代表を務める企業が営業する施設は少なくとも200件を超えていて、入手したリストによると、大半が中国人名義と思われる。
実際に、中国人が海外旅行者向けに複数展開している簡易宿所を訪れてみた。八坂神社と平安神宮の中間にある一等地の住宅地に位置するが、まだ海外観光客が戻ってきていないので、無人だった。近隣住民は「コロナの間は誰もいなかったが、以前は中国人オーナーとゴミ出しをめぐってトラブルがあった。今後観光客が戻ったら同様のトラブルが起きるのでは」と不安を口にした。
投資目的の中国人による不動産買収が増えていることから、京都市は「非居住住宅利活用促進税」を2026年度から導入予定で、別荘や居住実績のない住宅、空き家に課税する方針だ。しかし、外国人による不動産取得に関しては「制限の予定はない」(前出・京都市医療衛生センター)という。