歴史的な円安と物価高・賃金低迷を乗り越えるため、いまの日本が行うべき課題は3つあると、明治大学政治経済学部教授の飯田泰之さんは言う。
まず、製造拠点を国内回帰して円安メリットを享受するには、「電力対策」が急務だ。電力不足によってひとたび節電協力要請や計画停電などがあれば、大幅に生産が滞る。賃金を上げる余裕もないほどの不況の中、コストをかけて拠点を国内に戻して損するリスクがある以上、国内回帰に踏み切れる企業は少ないのだ。そして、人手不足を解消して賃上げに向かうための「財政出動」。さらには、いままさに物価高で困窮している人への「給付金や補助政策」も重要だ。
「いまの物価高は、国内要因よりも、コロナ、ウクライナといった世界的危機による影響が大きいため、遅かれ早かれ、いつか落ち着くことは間違いありません。間に合わせの金融政策で無理に抑え込むと、また将来、何らかのツケが回ってくることになる。まずは地盤を整えるべきです。転機は来年の半ばか、遅くとも後半にはやって来るはず」(飯田さん・以下同)
その上で、根深い国内の問題には、時間をかけた確実な対策が求められる。私たちは、回復の日を待ちながら、安くなった日本で暮らすほかない。むしろ、こんな状況だからこそ、日本人が、日本で、日本のモノを買うことが、経済の助けになる。
「米やもち、国産の野菜類、近海ものの魚介類など、伝統的に日本でつくられて、日本人が食べてきた食材の値上げ率は、そこまで高くありません。高い輸入品ではなく、値上げ率が比較的低い国産品を買って、レジャーは国内旅行に行くことが、個人でできる円安対策であり、物価高対策でもあります」
年が明けてしばらく経てば、雪解けが訪れるかもしれない。国内消費を心掛けながら、この“冬”を乗り越えるしかない。
※女性セブン2022年11月3日号