「悪い円安」が止まらない。為替市場では円が売られ、1年前の1ドル=110円前後から1ドル=150円近くまで急落。とくにこの半年間で円安が急激に進み、物価高騰に拍車をかけた。
為替介入は焼け石に水
日本政府は慌てている。鈴木俊一財務相は「投機的な円売りは断じて容認できない」と「ドル売り、円買い」の為替介入を行なっているが、瞬間的に回復しても、すぐ円安に戻ってしまう。
原因は日米の金融政策の違いにある。経済評論家の加谷珪一氏の説明はわかりやすい。
「日本と米国の金融政策は正反対です。米国のFRB(中央銀行)はお金を増やす量的緩和策で経済再生に成功すると一転、バラ撒きすぎたお金を回収する量的引き締めに入った。インフレが進行しているので、金利を引き上げて景気を意図的に悪くし、物価抑制策に舵を切っています。お金を回収して市中のドルの量を減らし、銀行からお金を借りにくくする政策です。
日銀は逆で、経済は立ち直っていないからとお金をバラ撒いて銀行から借りやすくするゼロ金利政策を続けている。紙幣の量が少ないドルの価値が上がり、量が多くなった円の価値は下がる。これは単純な経済原理です」
その結果、日米の政策金利の差は4%に達した。
「極論すると、ゼロ金利の日本でお金(円)を借り、ドルを買って米国で預けると4%の金利が付くんですからボロ儲けです。機関投資家はこれをやりますよ。日本政府のドル売りの為替介入は焼け石に水。率直に言って打つ手がありません」(同前)
日本の金融政策は世界の機関投資家のカモにされ、国民は物価高騰に苦しめられているのだ。
毎日新聞の世論調査(10月22~23日)では、日銀の金融緩和政策を「見直すべきだ」という意見が過半数の55%に達しているが、日銀の黒田東彦・総裁は、「異次元の金融緩和はデフレを解消し、成長を回復し、雇用を増加するという意味で効果があった」と方針を見直さない姿勢だ。