実は、日本経済にとって金融政策の転換は大きな痛みを伴う。多くの企業は超低金利でお金を借りているから、米国のように金利が急激に上がれば倒産が続出、住宅ローン破産も相次ぎ、国債の利払いがかさんで国家財政もパンクする。だから踏み込めない。
円安はどこまでいくのか。加谷氏はこう予測する。
「本来なら、少しずつ金利を上げていけば、ここまで円安にはならなかったはずだが、その場合、国民全員が痛みを共有しなければならない。政府・日銀はそれを回避するために金利を上げない選択をしてきたわけです。日米の金利差がこれだけ開いた以上、今後、日銀が多少軌道修正しても、理論上は、金利差が解消されるまで際限なく円が売られる可能性が高い。専門家の間には、1ドル=200円まで円安が進むという見方もあります」
ビール1缶400円
1ドル=200円時代の到来で国民生活はどう変わるのだろうか。
値上げされた2万品目のうち、食品の平均値上げ率は冷食など「加工食品」が16%、マヨネーズなどの「調味料」15%、「酒類・飲料」15%、「菓子」13%(帝国データバンク調べ)と大幅なものだが、一連の値上げラッシュは10月で一段落すると見られていた。
だが、円安がこのまま進めば原材料費などの輸入価格がもっと上がるため、企業はさらなる値上げを迫られる。
経済ジャーナリストの荻原博子氏は「食費は1.5倍、電気・ガス代は2倍」と指摘する。
「1ドル=200円になるということは、ほとんどの商品が値上げ後の現在の値段より3割以上、上がるということです。食費だけを見ても、これまで1か月の食費3万円でやりくりしていた家庭なら、4万5000円くらいに。電気、ガスなどエネルギー関連料金は1ドル=200円になれば2倍くらいの料金になるのではないでしょうか」
例えばビール。最近人気のプレミアムビール(500ml)はコンビニで350円ほど。それが「1ドル=200円」時代には約400円まで値上がりする計算になる。お手軽でハイクオリティーが売りのコンビニのコーヒーも一部は400円に迫るほど高くなる。