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止まらない「悪い円安」 1ドル=200円なら「食費1.5倍、電気・ガス代2倍」の狂乱物価に

「月20万円の支出がある家庭の場合、精一杯家計を切り詰めたとしても、最低限必要な出費で4万円くらい負担が増えることを覚悟する必要があります」(荻原氏)

 食品だけではない。衣食住すべてが上がっていく。

 アップルはこの7月から新型iPhoneなどの価格水準を最大2割引き上げたが、円安の進行はパソコン、スマホをはじめ、家電全般の幅広い値上げにつながる。

 前出の加谷氏が語る。

「かつての日本は工業製品を自国で生産していた輸出大国だったが、最近は家電の多くは中国製で国内生産はほとんどない。スマホもほぼ全部が輸入品。パソコンも基幹部分は全部輸入している。円安による輸入価格上昇の影響をまともに受けることになります」

 衣類もほとんどがベトナム、中国、バングラデシュなどで生産して輸入している。

 住宅価格はもっと上がる。戸建て住宅の建設費はすでに「ウッドショック」と呼ばれる輸入建材の暴騰でこの2年で約1000万円値上がりしているが、円安はそれに追い打ちを掛ける。

 教育費までアップするという。

「あまり知られていないが、教育産業はものすごく輸入依存度が高い。学校や塾は、朝から晩まで冷暖房と照明をつけっぱなしで、相当なエネルギーを消費する。電気代は猛烈に上がっているので、これが経営を圧迫している。一時より減ったとはいえ、大量の紙を使います。その紙のコストも上がっている。タブレットを使ったデジタル教材への転換を進めているが、そのタブレット本体も輸入品です」(同前)

 値上げが値上げを呼ぶ“狂乱物価”の再来だ。

 みずほリサーチ&テクノロジーズの試算によると、1ドル=150円が続いた場合、平均為替レートが1ドル=109円だった昨年と比べて1世帯当たり年間8万6000円ほど家計負担が増える。1ドル=200円になればその倍、20万円近い負担増となる計算だ。

 荻原氏がいう。

「日本は給料が上がらないのに、物価だけが上がっていく。消費は落ち込み、企業は商品を値上げしても儲からないから、賃上げできないという悪循環に拍車がかかります」

※週刊ポスト2022年11月11日号

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