鉄道は、多くの人にとって交通の手段としてだけでなく、趣味や娯楽の対象としても親しまれており、ときに人々の知的好奇心を刺激してくれる。交通技術ライターの川辺謙一氏による連載「鉄道の科学」。第4回は「『出発進行!』の掛け声」について。
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電車の一番前に乗り、運転室(乗務員室)の中をのぞき込んだことはありませんか? 鉄道に興味がある方なら、前方の景色を見るために一度はそれを経験したことがあるでしょう。
運転室をのぞき込むと、運転士がさまざまな動作をしているのを見ることができます。これから紹介する「指差喚呼(しさかんこ)」は、その代表例です。
「指差喚呼」は、確認する対象を指差し、声に出すことでミスの発生確率を最小限に抑えるための動作です。列車を安全に運行するための工夫の一つで、運転士だけでなく、車掌や駅員もこの動作をしています。もともとは日本の鉄道のみで行われていた動作だったようですが、現在は海外の一部の国の鉄道でも使われています。
また、電車の運転士は、発車する直前に前方を指差し、「出発進行」と声に出して言うことがあります(後述するように、言わないこともあります)。
これを「これから出発するぞ」という意味を持つ掛け声だと思っている方が多いようです。たしかに、駅で列車が発車するときに運転士が言うので、そう思う方がいても不思議ではないでしょう。